太陽光発電所でのフェンス設置は、基本的に必須になっています。今回は近年太陽光発電所のフェンスで主流になっている打ち込みタイプ(基礎無しフェンス)の種類、工事の流れや施工手順などを紹介します!
この記事は初めて基礎無しフェンスを工事される方や自分でフェンスを施工してみたい方に向けた記事内容となります。
目次
打ち込みタイプのフェンスとは?
打ち込み式のフェンスの最大の特徴は、ロウソク基礎やブロック基礎などのフェンス基礎が必要ない事です。杭を地面に打ち込み柱を立てるタイプや支柱と杭が一体型になっているタイプ、アニマルフェンスなども打ち込み式フェンスにあたります。また基礎なしフェンスとも呼ばれます。
フェンスの網は風の影響を受け難いメッシュフェンスの場合が多いです。
打ち込みフェンスのメリット
打ち込みタイプのフェンスのメリットですが設置費用が安く抑えられる事が最大のメリットです。
急勾配な傾斜地などにも設置可能な物もあり場所を選ばず設置できるのもメリットです。
太陽光発電所は郊外の敷地に売電目的で設置する場合が多いので、見た目がキレイで費用も抑えられる打ち込み式のフェンス需要が多いです。
材料費
まず材料費ですがロウソク基礎、ブロック基礎などのフェンス基礎を使う場合、大きさや地域にもよりますが2m間隔で1個あたり800円〜1200円程の基礎代がかかります。さらに運搬費など必要な場合もあり、材料費だけでも打ち込みタイプと比べると費用が高くなりますので、ブロック基礎などの基礎代が必要ない事がメリットになります。
施工費用
次に施工費ですがフェンス基礎を使う場合は、フェンス基礎用の掘削→基礎の据付→コンクリートで固める等の作業が必要になってきます。一方、基礎無しフェンスの場合は同工程が必要ないのでその分施工費がかかりません。一概には言えませんがフェンス基礎ありの場合は、基礎無しタイプと比べ1.5倍〜2倍近くの施工費用がかかる場合が多いです。施工費用を抑えられる点も打ち込み式フェンスのメリットとなります。
打ち込み式フェンスのデメリット
打ち込みタイプのフェンスのデメリットは、どのタイプを使うかによって変わってきます。ここではなるべく簡潔に打ち込み式のフェンスのデメリットをお伝えします。
仕上がり(見栄え)
基礎無しフェンスの最大のデメリットは見栄えの悪さです。特にアニマルフェンスやロールフェンスタイプはコーナーや勾配などがあると、たるみができてしまい見栄えが悪いです。また、いかにも簡易的なフェンスだなと思える仕上がりにしかならないのがデメリットかと思います。
ですが一般的に太陽光発電所で設置されている、杭打ち込みタイプのフェンスであれば、基礎ありフェンスの見栄えと遜色ない仕上がりになります。
また全ての打ち込みタイプのフェンスに言える事ですが、設置場所が石だらけの場合は見栄えが悪くなります。打ち込み式の場合は支柱か杭を地面に打ち込む必要があるので地中の石当たってしまうとフェンスラインにどうしてもガタつきがでます。
フェンスの強度
強度についてはメーカーや仕様によって異なります。アニマルフェンスやロールフェンスなどの支柱を打ち込むタイプのフェンスは根入れが比較的浅い物(40cm〜60cm)が多く、フェンスの網はもちろんの事、支柱にいたっても他のフェンスに強度は劣ります。控え(やらず)をとり補強しないといけない物も多く施工性もよくないです。
個人的な意見ですが、アニマルフェンスやロールフェンスなどは費用以外のメリットは無いと思います。
一方で杭を打ち込むタイプの基礎無しフェンスの場合は、杭の根入れが60cm 〜1mと深く網もしっかりとした物が多いです。積雪に対応したフェンスもあり強度的な部分でも安心できます。
強度は基本的に土圧
フェンスの独立基礎(ブロック基礎など)を使う場合も基礎なしタイプでも支柱の強度は土圧です。ブロック基礎などは土圧を受ける面積が広い分、強度が強くなります。基本的には基礎をいれた方がフェンスの強度は強くなります。
しかし地盤によっては打ち込みタイプの方が根入れが深い分強度がでる場合もあるので、絶対に基礎ありフェンスの方が強いわけではありません。
打ち込み式フェンスの施工手順
ここからは実際に工事をする時の手順、施工方法などを紹介します。個人でフェンスを設置したい方や初めてフェンスを設置する方でもなるべく分かるように施工手順をお伝えします。
今回は基礎なしフェンスのなかで1番オーソドックスな、杭を打ち込んでから支柱を立てるタイプの工事手順を紹介します。
用意する物
- 水糸
- 鉄筋や木杭
- 巻尺(測量用などの長めの物)
- 石頭ハンマー
- インパクトドライバー
- 番線カッターやクリッパーなど
- サビ止め塗料
- グラインダーや金鋸など切断工具
- 杭打ち機(大ハンマーなどで代用可)
インパクトドライバーはモンキーレンチなどで代用できますがフェンス取付金具などの数を考慮すると現実的ではありません。無い場合はホームセンターなどでレンタルしましょう。
境界の確認
まずは境界の確認をしましょう。太陽光発電所は長期に渡って設置される為、越境はしないように必ず境界を確認しましょう。しかし最近は構図のみでレイアウトを作ったりGoogle Mapでレイアウトを作る会社も増えてきていますので、その場合は必ずフェンスラインを施工前に確認しましょう。
杭の打ち込みの高さの確認(根入れ)
打ち込みタイプのフェンスはメーカーによって打ち込みの根入れが違います。
まずは支柱から1番下にくる穴までの長さをスケールなどで測りましょう。この長さが杭を打ち込む祭に大事になってきます。
写真のフェンスの場合は1番下の穴まで約17cmとなります。
フェンスラインを決める
フェンスを張るコーナーや折れ点に鉄筋や木杭などを立てて起点を作り水糸を張ります。
この時に起点に張る水糸は先程測った数字以下にしましょう。先程の数字以上で水糸を張ると全ての支柱から杭部分が露出してしまいますので、見た目を考えるならば低めに張りましょう。
フェンス用の杭を打ち込む
水糸に対して杭を打ち込む作業に入ります。
まずは杭ピッチを確認
打ち込みタイプのフェンスは、ほとんどが中国製です。図面の寸法が違う場合がよくあるので図面がある場合でも寸法は必ず実寸からとりましょう。網の長さ+フェンス取付金具の寸法が杭のピッチになります。
このフェンスの場合は網2000mm+金具25mm=2025mmが杭のピッチとなります。
水糸にそって打ち込む
先程張った水糸に対して杭を打ち込んでいきます。この工程がフェンス完成後、横から見た時の仕上がりに直結するので重要な作業となります。
弊社の場合は本打ち作業をする前に石頭ハンマーで仮打ち作業をおこないます。
打ち込む祭はビーガン、ブレーカー、油圧の杭打ち機などで打ち込む事をオススメします。当社の場合は油圧の杭打ち機で打ち込みます。労力は掛かりますが、石頭ハンマーや大ハンマーなどでも打ち込みは可能です。
巻尺などで距離を測りながら杭を先程張った水糸の高さに合わせ打ち込みましょう。
コンクリートやアスファルトがある場合
杭を打つ位置に薄いコンクリートやアスファルトがある場合でも、杭打ち機があれば打ち込みは可能です。
分厚いコンクリートなどがある場合は、杭打ち機でも入らない可能性があるのでアンカー施工などで対応しましょう。
打ち込みの際に、杭の頭が打撃によって潰れる場合があります。
支柱が立てれない場合は、グラインダーなどで切断します。切断後はサビ止めをしましょう。
フェンスの支柱を立てる
打ち込み後の杭に支柱を立てましょう。まずはコーナーなど起点になる支柱のボルトを締付けましょう。
支柱の高さを合わせる
起点の支柱に水糸を張ります。高さは高い所が起点となります。水糸に対して高い支柱をさらに起点とします。
この工程がフェンスの頭の仕上がりに直結するので高さはしっかりと合わせましょう。
垂直にする
高さを合わせる作業と並行してフェンス支柱を垂直に合わせましょう。
水平器などを使い垂直に合わせます。ボルトの締付けで直らないぐらい倒れてしまっている支柱は杭を打ち直すか、無理矢理起こします。起こした時に杭がゆるくなった場合は地面を転圧して固めましょう。
フェンスを張る
フェンスを張る作業は杭、支柱作業がしっかりできていれば誰が張ってもキレイに張れます。
基本は、Jフックを支柱に入れ網に掛け、隣の網と連結させる作業を繰り返すだけです。コーナーなどでフェンスが飛び出す場合は先に連結してから最後に番線カッターなどで切りましょう。
経験上フェンスを張る際は2マス程度網を出すのが施工性、強度共にベストだと思います。支柱から50cm程度フェンスが出る辺りから明らかに網の強度が落ちてきますので施工の際は注意しましょう。
また網と支柱を繋ぐJフックを締付ける際は締め過ぎないように注意しましょう。締め過ぎると支柱と網の塗膜を削ってしまってサビの原因になります。一部のJフックは過度に締め付けても問題ありませんが施工の際は現物を見て判断しましょう。
門扉の設置
門扉はメーカーによって仕様がかなり異なります。網を取付るJフック用の穴があったり無かったり杭支柱が分離タイプだったり一体型だったりと様々です。
今回は太陽光発電所で一般的な片開き1mの門扉の施工手順を紹介します。
基本は実寸で
門扉のピッチも杭と同様に実寸(物合わせ)で測りましょう。
杭と支柱が一体型の場合は、まずは門がつく方の支柱を打ち込みます。次に門を取付て寸法を門に合わせ、もう片方の支柱を打ち込みましょう。
この支柱の場合は約1200m打ち込みます。
門がつく支柱は基本的に1m以上打ち込む場合が多いので打ち込み用の機械が無い場合は相当な労力を費やすので個人の方などは注意しましょう。
また一体型の場合は支柱の頭が重機などで圧入しない限り、ほぼ確実に潰れるので切断用の工具も必須になります。
杭と支柱が分離型の場合は、門扉用の杭を打ち込み支柱と門を取付て実寸を取り、もう片方の杭と支柱を設置後に支柱の高さを合わせるだけです。施工性は分離型の方が高いです。
コーナーを仕上げる
コーナーなどで飛び出した余分なフェンスを番線カッターなどで切りましょう。
サビ止め用のキャップなどが付属している場合はキャップをしましょう。
キャップが無い場合はフェンスの色に近い塗料を塗りサビ止めしましょう。カラー番号が不明な場合が多いので、まったく同じ色にする場合は調合するしかなく、現実的ではありません。
コーナーを仕上げればフェンスの全工程が終了となります。
最後に
当記事を最後まで見ていただきありがとうございます!今回は主に打ち込み式のフェンスについて書かせていただきましたが、弊社では太陽光発電所におけるフェンス工事全般に対応しております。工事だけではなく、土地の形状や地盤による材料の選定や仕入れ等も可能ですので、お気軽にご相談ください!